若いツバメとの日々
買い物へ行ってくるわね、と夫に言い残して家を出る。
さて今日はどのコースにしようか。
まずは少し年下の、がっしりした体格の男の子のところへ。
次に整った顔立ちの、大人の雰囲気漂う男性のもとへ、最後は大学生の可愛らしいお兄さんのところに。
…ということで、まずはパン屋で、ガタイのいい店員の男の子と軽く世間話をしながら朝食用のパンを調達。
それから花屋に寄って、リビングに活ける季節の花を、綺麗な顔立ちの男性店長に見繕ってもらう。
最後はスーパーで夕食の材料を購入。
レジのバイトの男の子と挨拶を交わし、足取りも軽やかに帰宅。
結婚して夫以外の男性と大っぴらにデートするわけにもいかなくなった今、時々お気に入りの店員さんがいる店で買い物をするのが、ちょっとした楽しみだ。
もちろん下心もなく、くだらないお遊びなのだが、ほんの些細なことが日々に張りを持たせてくれる。
帰ってきた私を見て、夫が「今日は綺麗に化粧しているんだね、スカートだし」と言った。
そう、身綺麗にしようと心掛けるのも貴重な副産物。
「じゃあ、せっかく綺麗な格好していることだし、たまには2人でお茶しにいかない?」パンと花束とスーパーの袋をテーブルにどさりと置くと、私はにっこり笑って夫に提案した。
新調したスカートで新しい恋の予感
春になると恋をしたい気持ちになるのは本当みたいです。
いつもの私なら、恋なんてしている場合ではないと思っているのですが、なんとなく誰かと出会いたい気持ちになっています。
彼と別れてから仕事一筋で生きることに決めたのですが、こんな気持ちになるのも季節のせいだと思います。
大好きだった彼と別れたショックから立ち直るのは大変で、もう恋なんてしなくていいと思っていました。
恋愛特集の雑誌を見たり街で咲いている花を見たりして、恋がしたいなあという気分になっています。
お休みの日にお散歩に出かけるのが趣味なのですが、どんな場所だったらステキな出会いがあるだろうと想像しながら歩いています。
例えば早朝の誰もいない桜の花の下なんてとてもロマンティックです。
たまにお寺の境内でやっている骨董市なんていうのも同じ趣味の人と出会えそうな気がします。
ロングスカートを風に揺らして歩く季節外れの海岸での出会いなんて、想像しただけでうっとりしてしまいます。