早朝から激しい
枕の下の携帯電話が鳴ったのは朝5時前。
またか、と思いつつ電話に出ると、朝帰り途中の彼。
仕事でミスをしてしまい、反省会と称した飲み会でしぼられていたそうだ。
仕事のきつさと自分の不甲斐なさを切々と訴える彼の話を聞きながら、私は「ああ、彼も!」と、心の中で天を仰いだ。
初めは男らしい人でも、付き合ってから時間がたつと、延々と仕事の愚痴や疲れをメールや電話で訴えてくる。
こちらも仕事で辛いことはあるのだが、それを誰かに聞かせようとは思わないので、その心理が分からない。
適当に相槌をうてば怒るし、親身になって聞けば早朝から愚痴の電話でたたき起こされる。
結局は、「いい加減にしなさい」と、突き放した私が冷たい女だと責められて、別れに発展するのだ。
この時も失恋やむなしの覚悟で「あのね、私も仕事があるし、愚痴なら飲み屋さんで聞いてもらってね」と言った。
ああ、これで彼とも終わりだ。結構いい人だったのに。
また冷たい女だと罵られるんだろう。
しかし、しばらくの沈黙の後、電話の向こうから帰ってきた言葉は、「そうだよな、目が覚めた!そんなこと言われたのはじめてだよ。惚れ直した!」であった。
その後、彼の口から愚痴が出ることはなく、惚れ直したのは、私の方だった。
「おはようございます」という挨拶
日本語を勉強する時、日常挨拶は三つあると教えられました。
朝なら「おはようございます」、昼間なら「こんにちは」、夜なら「こんばんは」と言います。
しかし、アルバイト先で「おはようございます」のもう1つの使い方を教えていただきました。
アルバイト先では、午前10時出勤でも、午後6時出勤でも、仕事の始まりとして、みんなに「おはようございます」と言います。
最初は不思議だと思いましたが、よく考えたら、恐らく自分にとって、「今から仕事をしますよ」という合図でしょう。
本来ならば、朝から仕事をするのが普通ですので、「おはようございます」と言いますが、だんだん時間帯に拘らず、仕事をする前に、「おはようございます」と言うようになったと思います。
世の中には、釈然としないまま、言われるがままに、やらされていることが非常に多いと思いませんか。
理由を聞いてはいけないような雰囲気を醸しだし、それでいて、皆、不満そうにやっている異常な空気感を体験したことは、特に会社員なら誰もがあるでしょう。
これが日本独特の「ムラ社会」の名残ではないでしょうか。
疑問を持つことすら許されないのは、当時としては、統制に支障が出るから手控えたのではないかと思います。
横並び意識も、大昔から植え付けられた習慣でしょうね。
没個性は、今の就活にもはっきりと現れているじゃないですか。
誰もが不思議に思わずに横並び、一部の人間は不満を持ちながらも、そのレールから外れることを恐れる。